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2007年4月 5日 (木)

「風の谷のナウシカ」は状況の傍観者ではなく、状況に巻き込まれながら考えていくたたかう哲学者である

 わたしたちは核戦争や環境破壊の危機に直面しています。しかしながら、余りにも事が大きすぎますし、現実感に乏しいため、ひとごとと思ったり、諦めたり、無関心を装ったり、とかく直面することを避けようとしがちではないでしょうか。私たちの大好きなマンガの中に、このことを改めて考えさせ、勇気を与えてくれるものがあります。そんなマンガを私は誇りに思います。

 今日は

  まんが①死ぬほど面白いマンガを「まんたん」でみつけました

  というカテゴリーのなかで

  「風の谷のナウシカ」は状況の傍観者ではなく、状況に巻き込まれながら考えていくたたかう哲学者である

  と題して進めます。

0400_03  福島瑞穂先生は「マンガ名作講義」の中で、宮埼駿作「風の谷のナウシカ」について次のように書いています。 

・・・

   「風の谷のナウシカ」はまずアニメーションの映画を見て、その後、漫画を読んだ。映画の方が楽天的でわかりやすく、漫画の方は、ペシミステイックで筋は複雑だがずっと深い。しかし、どちらも強烈な印象だった。

 宮崎駿氏は、実家が飛行機を作っていたということもあってか「飛行シーン」が多い。バァーと大空と下界が広がっていく爽快なシーンは、足が地についていない解放感を与えてくれる。そして、ヒロイン像の変遷ということを挙げたいと思う。

       ◇   ◇   ◇

 彼の作品のなかでもヒロインは変わっていっている。「太陽の王子ホルスの大冒険」は、男の子のホルスが主人公。闘う勇敢な男の子だ。ルパン三世の「カリオストロの城」のクラリス嬢はお姫様。彼女自身が闘うのではなく、ルパン三世に助けられる。

 「未来少年コナン」では、超能力者のラナちやんは、コナンを助けたり、重要な役割を果たすけれど、やっぱり主人公はコナン。「風の谷のナウシカ」と同様、「核戦争後」を描いた名作だが、泳いだり、駆けたり活躍する主人公はやっぱりコナンだ。地球を救うのは男の子。「天空の城ラピュタ」では、女の子シータも頑張るが、最後は、男の子パズーに助けられる。男の子は元気とパワーで、女の子はお姫様でカギを解く秘宝を持っているという構造である。

0400_01_2  これらに対して、「風の谷のナウシカ」は、族長の娘(OOの娘、お姫様というのが気に入らないという人もいるが)で、彼女がまず主人公である。地球を救うという役割を女の子が果たす。トルメキアの第四皇女クシャナもナウシカとはタイプが違うが、めちゃくちゃ気が強くてしかも冷静、戦闘を指揮する新しいタイプのヒロインである。

 だれも助けてはくれないし、一人で旅立たなくてはいけない。しかも地球上が汚染され、戦争がやまず、子どもたちは生きにくく、人々は腐海のはとりで恐怖にふるえながら生きている。

 映画では、巨大な虫である王蟲(オーム)と腐海が実は地球を浄化するシステムであることが明かされる。しかし、漫画はそこで終わらず、核戦争の際にビルトインされたこのシステムのもとでは浄化された後の地球上では現状の人類を含めた生命は生存を許されず、「種」の交代が起きることが予定されていることをナウシカは明らかにしている。この漫画の最後でナウシカは、このビルトインされたシステムに屈服せず、このシステム自体を破壊して、汚染された地球とともに人類自らの力で生きのびる道を選択する。

 ナウシカは言う。「私たちの身体が人工で作り変えられていても私たちの生命は私たちのものだ。生命は生命の力で生きている」

 「生きるとは変わることだ。王蟲も粘菌も変わっていくだろう。腐海も共に生きるだろう」「苦しみや悲制やおろかさは清浄な世界でもなくなりはしない。それは人間の一部だから……。だからこそ苦界にあっても喜びや輝きもまたあるのに」

 ナウシカは状況の傍観者ではなく、状況に巻き込まれながら考えていくたたかう哲学者である。

       ◇   ◇   ◇

 「風の谷のナウシカ」は核戦争や環境危機のなかで人類が生きていく上での哲学を語った作品である。ナウシカは火を使って焼き払ったり、憎悪にかられて殺し合ったりという手段を使わず、どうやって人間は生き延びられるかということを模索している。風の流れをよみ、空を一人で飛ぶ。感受性が鋭く豊かで、排他的でなく、いろんな生命や人と交信できる。

 宮埼駿氏は、ギリシャ神話のオデュッセウスのなかに少し出てくるナウシカという女性をヒントにこのヒロイン像を作り上げた。その想像力と創造力に敬意を表したい。

・・・

 うーん。

 核戦争や環境破壊の危機を認識すること、逃げないことが大切なんですね。状況を傍観するのではなく、その状況に巻き込まれながらも、困難と闘い、考え、生き延びる道を探し、選らんで行くことが大切なんですね。私たちの大好きなマンガはこのことを改めて考えさせ、勇気を与えてくれます。そんなマンガを私は誇りに思います。

 あなたはどのように思いますか?

 読んでみたいと思いませんか?

 宮埼駿作「風の谷のナウシカ」は東京漫画探偵団(まんたん)に置いてあります。 

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